十三機兵防衛圏クリアしました。43時間22分、あっという間だったと思います。
パッケージから想像出来ないほどしっかりしたSFジュブナイル!
ルートによって別のジャンルの物語をしているので、ひとまとまりのストーリーでありながら、短編集のような見応えの群像劇でした。同じ世界を生きていて登場人物同士で関係性もあったりするのに、別のことをやっている、という。でもちゃんとまとまっている。思ったより恋愛要素が全然多い。
青春ラノベ、少女漫画、魔法少女もの、ハードボイルドSF映画、安楽椅子探偵もの、宇宙SFと時かけ、マクロス、エヴァンゲリオン、火の鳥などなど。途中はFF零式の最後の方。巨大戦闘ロボットに載る少年少女、身体に浮かぶマークも、好き要素てんこ盛り。チャートが振り返りやすくて助かります。これだけ詰め詰めにして、展開に矛盾がないのがすごい。
人生の主人公が自分だと言うなら、群像劇は誰かに偏った描き方をすべきでない…とまでは言わないですけど…。こういう話は「結局○○(黒幕とか、主人公とは別の誰か)のための物語だったんだな…」みたいな、主人公の影が薄くなるような展開を迎えることが多いような気がしますが(ギルティクラウンとか…エヴァンゲリオンとか…)、この話は誰のための物語という訳でもなかったので気持ちのいい読後感です。
十郎、いおり、奈津乃、東雲、網口あたりは特に、ガッツリ主人公として描いても全然問題ないくらいの設定とボリューム感なのにあえて誰も特別扱いしないのが、個人的に得点高い感じです。
姫ヒロイン枠もそういえばいないですね。全員主人公張ってます。良い。強い女の子好き。
結局当初の思惑は、戦いきった彼ら彼女らにはある意味関係ない話でしたね…。子供が大人の思惑によって戦い心も身体も傷ついたと思うと起きて良かったとも言えない…けど冷ややかに見れば、その痛みもまた成長の年輪になる必要なもので、これらの体験があったからこそ唯一孵化(比喩)したのかなとも考えられます。この大人からみた青春の、一つ寂しく薄暗い夕暮れのような読後感は正しくジュブナイルADVです。
九龍妖魔学園記と通ずるDNAを受信して「銀色の夕焼け」という単語をずっと噛み締めていたのですが、全然違いました。(正しくは「暁はただ銀色」)
コミカライズとかメディアミックスとか、もっとしててもいいくらいの完成度なのに…ネタバレ厳禁のためかな?勿体ない。
バトルも爽快感が合って1戦2分かからず終わりますし、こちらはキャラ性というより機体性能で使い分けることになるので軽い気持ちで均等に育つのが手軽でいいですね。こういう戦闘システム割と好きです。
以下は整理と感想なので、プレイ予定のある方はご注意ください。
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変なタイムマシンだと思いきや、「セクター」ってそういうことかあ!非現実的…本当に非現実だ!!なるほどなあって感じです。最後の方の絶望的だけど戦わなきゃ行けない空気がFF零式のルシルートの悲壮感でした。本気で滅びED覚悟した。
解放されたタイムラインを見て、まあ概ね理解できた気がします。普通にマジのSFだったし、何なら火の鳥。「地球へ…」や「獣王星」を読んで育ったので、こういう話に耐性が付いていて良かった。
その時いるセクターにリセットされたとき新たに生まれる仕組みだと考えられるので、本来の1980年代セクター4生まれは緒方と由貴と奈津乃だけ。うーん、ほとんど未来人。
エンディングの後原始レベルの生活から?ポッドにいろんな資源や情報遺ってるのかな。アダムとイヴになるんですけど、これって人口増えるんですかね?でも肉体を精製して15人も外に出ている訳だし、AIたちにこれからどんどん身体を与えていくのかな。治安大丈夫かな。もしかすると初期の職業に自然と戻っていくのかもしれない。この星の数十年後の話欲しい。
十郎
主人公だと思ったら違った。別に誰も主人公じゃなかった。
友達と過ごす日常に潜む違和感、突然好意を隠さない世話焼きの女の子と保護者のいない家で二人っきり、荒廃した未来の不思議な夢、優しく従順で平凡な少年…うーんラノベだ!
十郎本人は他メンバーに比べると何もしてない気がするんですが、記憶を失う前の和泉の頃は一番最初から戦っていたぽいし、だから記憶障害が一番酷くてまっさらになってしまった訳で…。功労者の余生の夢みたいなことかな。データの世界を一番味わい尽くした男かもしれない。
426になって恵を利用しても結局ひたむきで生意気な恵を娘のように可愛く思っているので、最初期に受け渡された幼い恵にも同じように可愛がったのかもしれないし、和泉も鞍部もやっぱり恵を可愛いと感じる(たまたま適齢期で同年代だったので恋愛になったというだけで)AIの志向性はあると思う。ラノベの男主人公が一人の女の子にずっと一途なの好き。
426、撃った時も辛そうだったし、恵にも意地悪言いながら最後は哀れに思ったし、鞍部の人格になる前も優しい人物だったんでしょうね…。最後データの中で逢えて良かった。
いおり
本当にパンを咥えて遅刻遅刻~してぶつかったクールな王子様は…実は未来人でアウトローで…とかいう…少女漫画…。この2人本当に好き。凡そ「アウトロー×平和な世界のお嬢さんが出会って、お嬢さんが育った世界を捨てて進む」物語が好きなので、CPとしての「イイ」要素も解っている。
全体の流れはこの人(たち)の人生を追うと非常に分かりやすいのですが、なにぶんありとあらゆる時空にいろんな形態で存在するのでプレイ中は訳が分からなくなる。ポテンシャルの高い波乱万丈な女なので、いおりが逆に特異に見える不思議。
—–脳内整理メモ
森村A:息子である沖野を大事に思っているが、上手くいっていない。
人類滅亡間近の未来の博士。自分たち生き残りの15人の遺伝子と人格AIを遺して「箱舟計画」を実行し死亡。当時の和泉によってAI個体の記憶が上書き出来るように変更されている。
森村B(Aの記憶はない):和泉と両想い(最後に回収されてよかったね…)
セクター1で16歳の時怪獣に襲われて、全部のセクターが壊滅したから時間が16年巻き戻ってしまって(沖野が転送したとなってるけど、タイムマシンは「ない」のでは?もしかすると意図的に巻き戻しを起こすことも出来るのかも知れない)、セクター1で戸籍などがないまま裏社会で和泉と育ち怪獣侵攻の黒幕だと考えた研究所を爆破(和泉は捕まって426に)、その後どこかで三浦と合流し、襲われているセクター2で井田と如月を保護してセクター4へ転移、どさくさに紛れて脱獄して追いかけてきた426が保護していた子供たちを射殺したので後ろから撃つ。その時生き残ったのがその後も暗躍する井田鉄也で、井田をセクター1へ転移させ死亡。その後時間がまた巻き戻る。
森村C(Bの記憶が上書きされている?Aの記憶はないが記録は見た):郷登が片想いしていた相手
セクター1で16歳の時、森村Bに転移させられた井田と出会い事情を聴かされそのまま成長(井田はあの時射殺された如月を蘇らせようと研究を続けている)、(セクター4へ転移し7歳の緒方を撃つ)、9年後転移したセクター2でも怪獣侵攻が始まり郷登と鞍部(セクター1で合流)、東雲と関ヶ原(セクター2で合流)と機兵を使って戦うも事故が起こり機兵を強制転移させ、井田を置いて郷登とセクター3へ転移。セクター3も壊滅し(ここで脳負荷を掛けすぎて機兵に載っていた3人は記憶障害が残る)、如月と薬師寺を回収してセクター4へ転移後、適合者と機兵を集めている。保健医として潜伏し、いおりにB、Cを上書きしようとしていた。イージス作戦(完遂すると怪獣を消滅させられるが、巻き戻りも出来なくなる)を実行しようとし、森村Eに射殺される。
森村D(B、Cの記憶を上書きされかけている。後にAの存在を知る):関ヶ原一筋
いおり。
森村E(Aの記憶が上書きされている、BとCの記録を見ている、Dとはリンクしていない):郷登を気に入っている、三浦を兄と親しんでいる
セクター5生まれで三浦の妹として育つ。セクター5壊滅時に郷登に回収されたタイミングでAの記憶の上書きが起こった。
「箱舟計画」を完遂させるための自浄作用である「巻き戻り」、それを殺してしまう「イージス作戦」をしようとする森村Cを射殺した。
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特に何の言い訳もなく育った時代と環境で性格も好きな人も違うので、敢えて「クローンだからオリジナルとは別人」なんだと言わなくても物語られているのが粋です。Bは犯罪を犯したら好きな人でも撃っているし、Cは割と恋愛どころじゃないって性格なのに、いおりは一目惚れするし好きな人を追いかけて転移するし、思えばマジで性格が違う。ちゃんと別人でしたね…。
十郎と三浦が生まれ変わっても大事な女の子は同じなのに対して、いおりは運命が違えば運命の相手も違う点はある意味乙女ゲームだし、少女漫画が好きな層の気持ちを解っている方の展開です。助かる。
残忍なところもある謎ロリだった千尋が、息子を可愛がれなかった当時の記憶も含んでるでしょうが、家族として最後に頼るよすがとして三浦を思い浮かべていたので私が救われました。三浦よかったね…。
恵
急にまどマギ(ほむら編)が始まる。好きになったら一直線!聞こえはいいけどいおり編に比べて展開がダークサイド過ぎて逆に面白い。でも撃たれなきゃチップを活性化して機兵に載れないので、実は名脇役だしキーヒロインでした。いうて2、3人しか撃ってなくない…?と思ったら半数以上撃ってた。
好きな人の記憶を取り戻すために悪魔に魂売ってたった一人の親友まで撃ったのに、結局願いが叶わないことを知って自分を撃ったら、それを哀れに思った悪魔のため少し思い出した好きな人と結ばれました。とさ。恵主観で言えば悪いことが起きすぎてそれどころじゃないでしょうが、こうしてざっくり掻い摘めばディズニープリンセスっぽい展開でしたね。大勝利で良かった。
奈津乃と三浦
元気系少女とみんなに秘密の未来から来たマスコットロボ!時をかけた先で出会った少年は最終兵器に載って戦う使命を持っていた!そしてマスコットロボはかつてその少年だった!ほら…この2人だけで1本映画が作れるんだって…。
何千年前のオリジナル、ある意味前世とも言える頃から恋人同士で、こうして運命的に出会ってまた恋をするのが堪らない。AIミウラは奈津乃と出会わなかったんだろうけど、長い人生の終わりに奈津乃との時間を過ごしてやっぱり「守りたい」気持ちになるのは…運命だな…。
緒方と如月と網口
如月、未来と過去どちらに振れるかでこんなに人生変わるのか…。
緒方はカゲプロして網口はマクロスしてますが、それぞれがそれぞれの如月をとてつもなく大事にしているのが強すぎて、何となく森村とは違う人形っぽさ、偶像っぽさを感じます。
本当に、網口を主人公にしてもいいくらいストーリーな男でした。「それまで歌ってくれ、君の歌が聴きたい」ってそこに愛があってもなくても、同じ言葉を口にするから因幡美雪的には嬉しかっただろうな…。消耗戦になりつつある苦しい最終決戦で歌が聴こえるっていいよね。
データになって軌道衛星にいる電子の歌姫と、ツッパリ上りの熱い旦那と小さい子供のいる平凡な生活。うーん、振れ幅!乙女ゲームでこんなにヒロインに振れ幅あったら面白いでしょうね。
由貴ちゃん
そして急に探偵ミステリが始まる。
怪しい大人にあまり振り回されず、ただ友達を探しに奔走した超いい子。色気食い気に惹かれる者の多い中、全然脱線せずにずっとなっちゃんを探していました。奈津乃ルートがふわふわしていた分由貴ルートは結構現実的というか、警察などの大人と関わる機会も多く、色の違う世界観を味わえました。
比治山
不穏な記憶とか夢とか銃持った人がはびこる中、あまりに平和な男。怪獣侵攻を身をもって知らず、知り合いと一緒に転移した影響もあるんでしょうね、ちょっと気楽というか。沖野が何を目指しているのかも分からないまま手伝っている訳ですし…。
それでも既に人を守って人を殺す腹を決めていた分、戦闘会話では唯一周りを奮い立たせていて、13人の中にコイツがいて良かったなあとグッと来ました。
関ヶ原
アウトローでサスペンスな男。大人っぽいクールなイケメンで未来のバイクに載って、未来の銃を持って誰ともつるまない。あと素人には撃たれないし、民家に土足で踏みこむし、はっきりした根城はない…アウトロー徹底してる。こういうクールキャラっておふざけの標的になったりするのですが、最後まで一匹狼でカッコいいままにいさせてくれてありがとう。
特に面白かったことも会いたい人もいないから、セクターのアーカイブには行かないってことなんですかね…。過去を終えて、なんなら記憶も失ったままやっと目線を前に向けた時に、自分を想う誰かがいるっていい。明るい未来あれ。
東雲と郷登
東雲主人公で信頼できない語り部系のADVが作れそう。
先程森村のまとめをしていたら、古株のようでそうでもなかった。森村、井田にそれぞれ近づきたいのもあって、必然知ることも多かったってことですかね。
東雲いいキャラですね…病的で儚げでケガだらけでミステリアスで、一切媚びず懐かず、偏執的に叶わない恋をして騙されてる。綾波レイかな?
ボロボロのまま断片的に残った記憶をたよりに真実を探そうとするのに、独りふらふら彷徨った挙句自分が利用されていたことを知って、それすら忘れてしまって、プレイヤー視点だと気付きにくいですが、最初から知ってる郷登や森村はどんな気持ちで見ているのだろう…。でも見ているだけで彼女のために何かをしたのは関ヶ原だけなのに、向こうも色々安定しないのが、如月や恵と比べてあまり周りに恵まれていないのが災いしてます。気の毒。
結局井田の呪縛から離れて、というか辛かったり痛かったりした記憶を全部なくした新天地でゆっくり生活して欲しい。
中学の時に付き合っていたみたいですが、今後はどうだろう。相棒というか対等な関係として落ち着いて欲しい。
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2週目したら伏線を丁寧に楽しめそうですが、ちょっとボリュームが多いので気が向いたらにします。
高評価93%は伊達じゃなかったので、FF零式とか少女漫画が好きなら是非やってみてください。