お久しぶりです。
フリーゲームペンタゴンシンドロームの感想記事です。かなりの完成度ですので、もし良ければ。恋愛要素有り、程度のカウンセリングADVです。つまり糖度はかなり、低めです。
元は何らかの別のゲームの設定をリスペクトしているとか…?全然知らずとも楽しめました。終わった後の、あの抜けるような感覚は夏空のモノローグに近く、ただし攻略に至るまでに入る墓の数はアムネシアを彷彿とさせます。そういうゲームがお好きなら是非。
攻略順に並んでいます。どの順番でも別に問題はなかったような気がしますが、この攻略順かなり良かったのではないかと思っています。フルコンはしていないです。
肝心のところは伏せますが、ネタバレ上等で進んでいますので、初見のまま楽しみたい方はご注意ください。
文太
「初めての事だらけに、震える手を取って暖めあう。耐えられない位に高鳴る心臓も、そうだ、楽しんでしまえばいい」
ある意味地に足のついた「社会的」で、まさに「Sは奉仕の心とはこういうことかあ」なキャラクター。
初見一発目から叱られるんですが、それもぐうの音も出ないほどいい奴の叱り方で、全然ウザくないのが凄い。異色なキャラ。
それに、友達としてすごく気が合う感じ?がいいんですよね。遠慮のないやり取りが凄く楽しい。超いい奴。真面目に頑張っているから弄べない。よくよく健気なんですけど、その「かわいそうでしょ?」を前面に出して来ない感じがいい。何かもう報われてほしい。途中まで長兄っぽいイメージだったのですが、年齢的には一番年下なのが不思議な感じです。
多分一番乙女ゲームっぽい。メインの攻略キャラと言うよりは、比較的常識的で社会的な側面を多く持っているから登場シーンも多くなるというか(?)でもそれは文太の頑張りが実を結んだために掴んだ地位なので…。自力で人脈も勝ち取っているし…。
どのルートでも大抵「文太が一番頑張った」と誰もが認めていますし(そのせいかは不明ですが、他ルートよりはだいぶ結末が穏やか&Normalでもそれほど悲惨なことにはならない気がします。当社比で。)、自分でもそれを自負しているので、簡単に譲ったりはしない。だけど、別に凄く生きたそうという訳でもなくて、多分「頑張った」を認めて欲しい、自分の努力を尊んで欲しい、だけのような気すらします。別ルートで「元よりその思考はない」と言いきったところがまさにそれ。でも「一緒に真剣に考えて欲しかった」とは思っていたんだよなあ…寂しい、ムカつく、自分はこんなに頑張っているのに!…そう思ってしまっても、不思議じゃない、かも。
カナ(主人公)に出会って、少しだけ外れてしまった。文太は強くなったけど、やっぱり「籠の外」では生きられない。
死んだ文鳥は汚い?触りたくない?外に出してあげただけ?生きていけると思った?文太を殺したのは自分だって分かってる?
…ひたむきに生きていただけあって、Badのえぐりにくる感じは容赦ないです。このBad(楓END)は是非。
そういえば文太のNormalだけ「審判」なんですよね。ちょっと気になります(未回収です…)
難関学部の首席で、マナーも完璧で、気に入った柔軟剤の香りのハンカチ持ってるのに喧嘩っ早くて口が悪くて、ついでに手も早い(新しいことを知るのが彼の領分ではある)。よく気が付いて気遣いもできる。子供が好き。笑った顔は色っぽくて、ベストED後は「大人みたいになった」…チートか?
余談ですが、別ルートでピンクゴールドのシンプルで上品な雫型のペンダントをくれたりしました。センスまでいいとかお前マジ…。でもちょっと重い。彼女が男と2人で出歩かないでほしいってサラッと言われてキュンとしたり。
文太めっちゃ好きです。ラストで好きな食べ物があったのが、なんかこう、グッときます。
セイ
めっちゃ人懐こいし、何ならセイのガチな恋バナまであるマジ友達ルート。乙女ゲームとは程遠いところにある。
無邪気に一番生きたがっているように見えたので、悪戯心で否定値上げまくったのになぜか一発ベストEDへ辿り着いてしまう。なぜ…。途中まで全然ベストな雰囲気漂っていなかったので本当に不思議。ラブはほぼなく、大体はカウンセリングです。
食いつくしてしまう…というかなんというか、非常にハイド的な人物。まあセイだけは睡眠の一部と食事というかなり生存本能な部分を司っているので、なんだろう…暴力的で、本能的な感じがする。そういう意味では木場と性質も若干近いのかもしれないですね。終わった後に「ダメ男を一人製造したなあ」とつくづく思うところも木場ルートを彷彿とさせます。
念願の友達として凄く大事にしてくれるので、他ルートの方がシンプルに可愛くていい奴のように思えます。特にカラスルートとか…。
岡目
「カバーガラスなんだ俺の心は!!」「えっ 簡単に取り替え可能ってこと?」
言い間違えのギャグシーン会話のはずなのにど真ん中ぶっ刺さって笑えない。エモイ。ヤバい。エモ。
文太が「奉仕」なら、岡目は「自己犠牲」、「贖罪」。あとやっぱり盾のイメージでしょう。一番他を思いやって、過去の負い目を払しょくするために自分を殺す。それでいいと思い込んでいた。ルートに入るとやっぱり少しその思いが逸れてしまい、生きたいと願ってしまう。他ルートだとかなり自分の領分に忠実な感じですけどね…山に埋められた?こととかありましたし。
単純で不器用で、だからこそ誰より真っ直ぐ生きたいとするその愚直さというか、なんだかんだ一番落ち着き方が収まりよかったのは彼ゆえなんでしょうね。優しい馬鹿だ、と構って助けてやりたくなるその感じ。泣いているシーンのスチル、美しくて一番好きです。
ちょいちょい挟まる流血シーンもサイコな感じでひえっとなるんですが、岡目関係で一番怖いのはNormal。
クリスマスデートで彼女のご家族に紹介してもらう!みたいなほのぼのストーリーからの(この流れは他のルートも基本的に同じなのでそれはそれとして)、まさかの「あの日の続きを」「今度こそ」と木場が出てきちゃうシーン。
木場ルートやれば分かりますが、岡目じゃなくて、木場です。木場。つまりこの後…つまり…。意味が分かると怖い話状態。
ベストエンドはデートの内容が違うのでNormalの悲劇は回避されるのですが、岡目が岡目である以上、Normalの時のようなことが繰り返されたり…してしまわないか心配になります。
あと肉感的というか、エロい。文太も手は出てたのですが、サラッとしていたので…。岡目の筋肉とか肌とか汗とか匂いとか。全体的に生々しい。少なくとも15禁。
木場
「好きな方、取っちゃいなよ」
ティーカップポイズナー。木場ルートは所謂裏側、負の側面から見たような感じなので、最後の方に攻略した方が話がエモさを増して理解できて多分いい感じです。多分アムネシアでトーマや裏ウキョウが好きな人は木場好きだと思います。
「僕を選んだ訳じゃないものね…。普通に皆とも遊んでるよね」
「でも、お互いがお互いを助け合って、狂っていた」
舞台や芸術や文学を好むだけあるのか、彼の本質から来るのか、ドキッとするようなセリフが散りばめられていて、そういうのが好きな人には堪らないです。
「登場人物に感情移入して、人生を乗っ取った気分になる」
自分の本質を恨んでいる訳ではなく、自分の本質を否定されて殺されるのが多分嫌だったんでしょうか…。活き活きして、かなり積極的に「刃」を振るおうとしていますからね。にっこり笑って、時には他人のふりをして欺いて。
自分が健全でないことも、「選ばれる良いもの」でないことも、もちろん知っている。だから誰かになりきって別の何かになろうとして、それでも本質を拭いされない。だって、自分の意義を否定したくはないから。
でも何だかんだで一番人間臭くて共感出来るのは木場だと思うんです。主人公が良い人だからこそ、自身の嫌いな部分を曝け出されて、だから木場は主人公が嫌いになる。でも全然趣味の合わない主人公と違うものを持ち寄って過ごすのは楽しくて、もっと時間が欲しくて、「選ばれない自分」が嫌になりそうになる。だから君が嫌い。
うーーーーーん!矛盾の中で好きも嫌いも交錯する感じ、非常に好きです。本能を無理に理性で整形しようとしたら歪んだ感じとその退廃。好き。表情もいい。
バッドが「愛してくれてありがとう」「愛してるなら死んで見せて」に対し、ベストは「全身全霊で君を愛するよ」なのでつまり、木場に一番必要だったのは自己肯定だったのかなあなどと思う訳です。他の誰かが要らないと言っても、「自分」が必要とした「木場」を誇る。そういうことですよねつまり。ラストでヤンデレ彼女に管理して貰うのがいいと言われてふと気づくんですが、主人公もなかなかの粘着質という…割れ鍋に綴じ蓋…いや…はい…。それはそれとして「浮気したら殺す(ガチ)」男子はいいものです。
本能的に求めるのが経験なのも非常にらしくて、説得力あるシナリオとキャラを噛み締められました。
カラスルート、ひたすらにカウンセリングゲーで特筆するところがないので割愛します。所謂真相ルートですね。恋愛要素はほぼないです。残念。
大団円エンドないんですが、それでこそだと思います。
シェアはもう終わり。両立する未来はない。その大前提を崩さないのが誠実でいいんです。