お疲れ様です。
話題作を一気にフルコンしたので、興奮冷めやらぬうちに残しておこうかなと思います。
大穢 主人公総攻めBLゲーム R18
※以下ネタバレ有のため注意
世界観・システム
こういうレトロクラシカルダーティ和風世界、大好きなので導入からもう世界が楽しい。1955年、終戦後10年と工業化は進みつつ、まだ傷跡も記憶も生々しい、旧時代の諸々もまだ色濃く残る頃ですね。京極夏彦の百鬼夜行シリーズとかと大体同じ時代かな。
本文中にしっかり出てきたアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」を始め、ミステリ関連のオマージュみたいなものが多分散りばめられてて、そういう「分かる人には分かるtips」は粋だなあと思います。あまり詳しくないので佐清と静馬くらいはっきりしているもの以外アレですが…。大崎君の過去の有明さんとの事件は「姑獲鳥の夏」っぽいな~とか、そんな感じ。
…オマージュ元の佐清と静馬、湖に落とされたのは静馬の方じゃなかったっけ。静馬さんの√は後編に収録なので、楽しみに待ってます。
変換ミスらしき誤字をどっかで見かけた以外は文字も読みやすく、声優さんの演技もいい感じでサクサク読み進められました。というか舐めてた、個人サークル製作っぽいしフルボイスあってもねえ…と、思ったら聞き覚えのある声…公式サイトよく見たら普通にプロ勢ぞろいで戦慄しました。このテキスト量とCGクオリティと枚数とCVメンバーで4400円は正直安すぎるよ~
ちなみにBLゲームを初めてまともにプレイしました。
ミステリサスペンスのビジュアルサウンドノベルがシームレスにBLになっていくし、極限状態の時間の中で、育まれたものや琴線に触れた瞬間があったんだろうなあと素直に思えて良かった。BL世界特有の「同性同士がパートナーになることに当人らと他に違和感も生まれない」ご都合主義が苦手なんですが、そういうのが薄くて助かる。「俺達付き合ってます~イエ~イ一生ハッピーずっと一緒にいようね!」「お前らほんとラブラブだよな~おめでとう!」みたいなのは、昭和中期はおろか令和でも無理だよと引っかかって全然話が入って来なくて…。ファンタジーと割りきれない哀しい性。
ちなみに大穢の主人公は女性ではダメだなと思います。また明かされないですが多分島にまつわる諸々とかを思うと女じゃダメなんだろうなあと。そしてストーリー展開上「女の細腕だから出来ない」とか「女性の体力でそれは出来ない」などというある種の特権はノイズにしかならないし、大崎君が気絶した成人男性を軽々担いで悪路を走って逃げられるフィジカル◎主人公じゃなきゃどの攻略対象とも生きて帰れない。PvPがなくても過酷な状況なのでね、大崎君が強くて丈夫なことを疑わずに済むのはありがたい。
テーマ曲が攻略キャラごとに違うのがまたすごいですね。手厚い。好き。
良いメロディですが、歌詞が何か違和感があると言うか、あんまり曲っぽくない。メロディのついた詞みたいな不思議な感じ。嫌いじゃない。
1周目・4周目
「あれから何も変わっていません。僕は僕です。
変わってしまったのは、あなたのほうではないですか?」
流れるように連鎖するトラブルでどこまでが共通か分かりませんが、ともかく多分メインヒロイン有明さん√。一本道です。
船野さんのビジュアルいいなあと言っていたら殺され、竹芝さんの心意気好きだなあと言ったら殺されました。いいとこ見せたひとから殺されていく、多分。
「手品する前の日に、布団の中でお祈りするんよ。
明日はたくさんの人が笑うてくれますように、ボクが誰かを幸せにできますようにって」
▲竹芝さんのこういう考え、素敵だし好き。
有明さん、優しく人情家で笑った顔が素敵な小柄でか弱くなよやかな年上未亡人。要素てんこ盛り。この人とのやり取りは分かりやすくBLっぽいし、Bの結論は「愛を理由に業を行う罪人」あるいは「罪に愛と名前を付けた悪人」の話なので1周目これはいいですね。世界観とコンセプトの「穢れ」が最後までたっぷり詰まっている。
終わってから思えば、有明さんは普通に優しくて心から泣いたり笑ったりしているけど、思わせぶりに巣を広げて絡め取った相手を食べるのもまた本能で、そこに善悪の意はないっていう…悪意と作為まみれも怖いけど、邪悪な天然も超怖いだろう…。
多分もうわざとなんじゃないかってくらい立ち絵やスチルで有明さんの結婚指輪が目立つのが、もうずっと気になっていたので、Aエンドで大崎君が嫉妬したり指輪抜きとったりしていて安心しました。指輪していた方がフェチ的に燃えるのも分かるけど、有明さんが運命とか伴侶といった言葉を使ったり、好意をあらわにして大崎君と他の人とのやり取りに不機嫌な素振りをするたびに、「いやお前さあ?」ってなったよね?!人によっては気色悪いとも思うんじゃないのかな。それって「穢れ」って言ってさあ…。
穢
ここで「穢」の話。作品名の大穢と大江島が掛かっていてニッコリ。
死、死体、血、葬儀屋、腐敗した食べかけの食事、たかる虫、死体の損壊、食人、吐瀉物、倒錯した性行為、近親相姦、不倫、自殺、強姦、パッと思いついたのはその位ですかね、「穢れ」のオンパレードなんですよこの島。そしてそれらは火によって清められ、救われる。モチーフとして有名だし、作品内の言い伝えもそうだし、実際に火事起こして助けを呼ぶ訳ですし。タバコやマッチ、ライターなどの火関係のアイテムも印象的に散りばめられていて…なんだろうなあ。全員島共々焼いて綺麗にしたかったのかなあ。
からの、大崎君が全員集まると思う「まるで親族のよう」な感覚と、豊洲さんの「心なしか、皆様お顔立ちもよく似てらっしゃる」発言。髪の色や目の色が全員同じに揃えてあること、大崎君の祖母と新橋さんの祖母が同郷の学友なだけの筈なのになんだか似ていること、万屋の写真の女の子が全員そっくりだったこと、そもそも大崎君と静馬さんが瓜二つなこと。
島の興りは1人の妊婦で、産んだ息子と人を増やしたみたいな逸話もありましたが…そんな遠い昔の話でなく、もっとかなり直近でも起こっているような血の近さなんじゃあ…こわ…。
メモ 島出身者
「大崎君の祖母」
産んだ娘とその息子(大崎君の兄)から大崎君が生まれる。身体が弱い、大崎君の暴力と窃盗を禊ぐべく焼身自殺。
「新橋さんの祖母」
大崎さんの祖母と仲が良く、奉公先も一緒だった。問題のある兄から離すために引き取っている。仲の良い夫婦だった。
「有明さんの祖母」
よく島の景色を話してくれた。
「大江杏」とその「付き人」
手紙を読む限り容姿や声がそっくり。義兄に思いを寄せているのは杏?
目と髪の色を見る限り、静馬さんの父も島の血が流れる人。
青海先生と島の繋がりは青海先生√でも出てなかった気がするけど、多分実母ではなく罪状のある父本人が島の家系。
これ妄想と考察なんですけど、大江島の女は近親相姦で子どもを作るし、産まれた男は罪を犯す穢れの無間ループしてるね?
送り火で禊をするのは、産まれた由来も業だし生きてる間に罪を犯すのを止められないし、せめて死んだら早く穢れを払って極楽に行こうねっていうことかな。大崎君の祖母はこれを知っていて、娘も孫も呪われているって自分を送り火したね?
ひえ~~グロい。個々人の罪状やその凶行に至った経緯はそれぞれのはずなのに、存命の血族集めたら全員罪を犯していてそれどころか生まれて今ここにいる理由すら積み重なった罪業ゆえとか…じゃあ攻略対象誰を選んで好きになっても、全員近親ってこと…?男で良かった大崎君、子供が産める組み合わせでないから途絶えさせられる連鎖もあるのか…。
それで「生まれて来てくれてありがとう」や「おやすみ」みたいな家族愛みたいなものが尊いものと描かれているのがなあ。今出ている話の中で、近しい家族と上手く行っている人がいない、恐らくそういう愛に飢えている人達の集いなのも気になる。
「家族の温もり」を埋めたい気持ちで引きあって、それで子どもや出来た人間もいたり、男同士でも惹かれあったり、こう…邪悪な引力を感じる。何故。
2周目
「人が生まれながらに善人だとは
真の悪人が唱える戯れ言でございます」
1周目でヘイトを溜めさせた新橋さんが、味方になったらこんなに頼もしい。大崎君が優しくて疑いきれない部分をずけずけ行ける、新橋さんが妄想と現実で混乱したときに冷静でいられる大崎君の良いコンビです。
でも新橋さんは培った被害妄想と防衛本能を止められないし、大崎君は優しい巧みな言葉や分かりやすい態度で安心を与えることは出来ないっていう。まあその綱渡りが楽しいという説もあるか。
そして有明さんが逆にちょっと邪魔みたいに描かれていて、大崎君が懐に入れて好きになったゆえに聖人のまま書かれただけで、この人やっぱり「凶」だな…っていうのがよく分かりました。有明さんの罪状、優しいとか他人に寄り添うと本気で言って殺してるので、サイコとまでは言わないけど…シリアルキラーとも言わないけど…。
3周目
「でも。誰も悪くなかったら。
どうして誰も涙を止められないんでしょう」
まさかの攻略済み2人を2キルっていう。いや新橋さんが最後あまりに可愛いネコちゃんだったので、1周目みたいな醜態は見たくないなとは思ってたけど、じゃあ早めに退場すれば解決だねではないんだな。
青海先生も新橋さんとはタイプの違う探偵枠に成り得る人で組めたことによりまた明らかになることも多い周でした。
万屋や地下牢などの新マップも初出ですね。将棋倒しの世界で見えるものが徐々に増えるのが、ミステリの楽しさです。
というか罪状が相互じゃないことをギリギリまで共有しないことで、こんなに世界が変わるんですねえ…!
この人の独白がなんか一番心がキュッとした。善意で出会わせて、父を知れて、教え子の才能が開花し、好きな二人が仲良くて幸せ。これも本当。でも自分が得られなかった関心を得る教え子とその才能に嫉妬し、父が犯した凶行に悲しみ、遺族には申し訳なくて、でも父のことは大切で、余計なことをしなければよかったと全ての憤りを自分に向けた人。
真面目な人なんだ…だからこそ振り向いてくれない人を真面目に考えず、ずっとこっちを向いてくれる大崎君をどう振り回すか、教職としてどうしていこうかにそのリソースが切り替わったのがなんか嬉しい。
罪 罰 赦し
トラブルの火種の一つに「罪状」があって、それを見てあいつは悪人だからしょうがないとか。
有明さんの√が特に顕著な、されたことへの報復はしょうがないとか。
何かしらのテーマになってはいそうなんですよね~
え~~分かりかけてきた分、後編が本当に待ち遠しい。冬って書いてあるけど次の冬?それともまる1年待つ感じか?
同サークルの「古書店街の橋姫」だったかな、こちらも非常に評判良いのでいずれやってみようかと思います。